DVDとパソコンで、1975年制作のアメリカ映画『カッコーの巣の上で』を鑑賞しました。1975年度の米アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の主要5部門(作品、脚本、監督、主演男優、主演女優)を独占したことでも、空前絶後の作品である、との話題性もある作品です。
私宮岡治郎にとって、満20歳の1976年に日本で公開された話題作で、主演のジャック・ニコルソンが受賞前の頃日本テレビの深夜番組『11PM』に出演し、大橋巨泉氏のインタビューなどを受けていたり、予告編を映画館やテレビで見る機会もありました。
『人間の自由と尊厳』を主題とした、重厚な作品です。ところが、公開当時の私は、舞台が精神病院で、主人公は刑務所の受刑者で懲役を逃れるため精神病者を装って入院した、といった設定や、他の患者、看護士、看護婦、医師を含めた世界を描いているために、あまり鑑賞する気がしませんでした。
観るべき時を逸して、34年後の2010年、満54歳にして初めて全編完全版を鑑賞する機会を得ました。
看護婦長は患者たちを「ジェントルマン」と呼び、個別の名前には「ミスター」を付加して「尊重」して呼んでいますが、刑務所よりも管理体制、自由の束縛、人権侵害は進んだ世界として精神病院が描かれています。様々な裏からの威嚇や強制による統制は不気味であり、グロテスクですらあります。
34年前の私ならば、精神病患者の医療体制の維持のためには止むを得ない、あるいは必要悪として、十分な理解をせずに、この映画を逆に解釈したかとも考えられました。マクマーフィーの側も、病院の秩序を乱し、患者の療養の妨害をしている側面も否定出来ないからです。
「刑務所」が「刑罰」の施設ならば、「医療」の施設である「精神病院」の方が、居心地良く生活も楽であるに違いない、との素朴な誤解が、主人公マクマーフィーの陥ったそもそもの悲劇です。
しかしその一方彼は、多くの患者たちにとっては、しばしの慰安を調達する闖入者となるようです。それによる喜劇的な要素もあり、多少の救いとなっています。
この作品の10年後に映画『バックトゥーザフユーチャー』で、博士を演じた、クリストファー・ロイドが患者役の一人として出演しいるのが面白い発見でした。公開当初の鑑賞では、味わえない利点です。
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