20年前のバブル最盛期には、あまり問題意識も無く「奨励」された言葉に、「スクラップ・アンド・ビルド」があります。広辞苑では、①古くなった設備を廃棄し、新しい設備を設けること。②行政機構を新設する場合、同等の既存の機構を廃止し、機構全体の膨張を抑制すること。「ーー方式」:となっています。
限定的に、設備の利用効率だけから見れば、確かに最も「理に適った」方法であったと思います。しかし、「スクラップ」の時点で、まだ残存する使用価値を能動的に破砕することへの、抵抗感、少なくとも違和感があった人も多かったと思います。潜在意識としては、ほぼ万人がそのような違和感を抱いたことと思います。
現在でも、バブルとは違った経済環境や社会的な背景の下、以前ほどでは無いにしろ、部分的には性急な「スクラップ・アンド・ビルド」は進行しています。歴史や伝統的な価値を無視、というよりも理解せず、肝心な部分が破砕され、当面の利用価値のある、と判断される部分だけが、中途半端に温存される向きもあるようです。
急激な変動を求める人々は、有史以来何時の時代にも存在します。彼らは、公共の福祉を看板に掲げる場合もあるでしょうが、多くは、危険負担の上での高い利益還元を追い求めているもので、「社会経済」といった公共性は眼中に無いのです。「スクラップ・アンド・ビルド」は徐々に、消え去るべき言葉の一つです。
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