地方議会と国会との違いといえば、地方自治体と国との違いである、とお考えの向きも多いかと思います。が、双方の議会の比較はさほど簡単なものではありません。存立の根本的な差異として、「大統領制」の下での議会と、議員内閣制の下での議会といった、それぞれの構造的な差異もあります。
都道府県や区市長村の首長は、住民の直接選挙で選出されます。従って、敢えて「大統領」と僭称させてみました。国の首相は、国会で衆議院議員の中から互選されます。
地方議会の議員は、何回当選しても、議長になっても、最大会派の会長になっても首長にはなれません。首長選挙に自らが出馬して当選しなければなりませんが、本質的に地方議会とな別の範疇の事柄に属します。首長の立場は大統領制であり権限も強大です。議会は、制度的にも実質的にも、首長と対等ではありません。
国会では、議席数で多数派となった単独の政党あるいは連立の政党が、その中から首相候補者に投票し、その表決によって首相が決定し、内閣は概ね政権与党の国会議員が配置され、政権与党となります。首相は、議員内閣制の背景を持ち、その選出母体の議席過半数が崩壊しますと、内閣不信任によって首相の立脚の根拠を失います。
地方議会と国会とを比較しますと、地方議会は、首長との関係で相対的に地位が低く、国会は、首相との関係で、相対的に地位が高くなっています。
昨今、首相の衆議院解散権が注目される為に、衆議院議員としての身分の不安定性が、国民に印象付けられているようですが、政治的な機能としては、首相の権限は限定的でしょう。
地方自治法では、地方自治体の首長には、緊急事態に対処する場合、『専決処分』が認められています。いわば超法規的な規定です。予算も含めて行政執行し、事後的に議会の承認を得れば良く、仮に事後承認を得られなくとも、差し支えないのです。
日本国憲法第41条では、「国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」と規定されています。大日本帝国憲法下で、国を誤るきっかけを作った天皇の『緊急勅令』の反省から、成り立っているものでしょう。
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