政治家とは、正規の情報源とは別に、私的な秘匿された情報源を有する場合もあります。幕末の徳川幕府大老、井伊直弼(1845~60)にとって、京都での討幕派の動きは、幕閣の老中、間部アキ(言篇に全)勝配下の正規の探索組織の情報源に止まらず、腹心の長野主膳、宇津木六之丞といった私的で秘密の情報源もあったようです。
そもそも「幕府隠密」という言葉が、世上にも十分に流布するごとく、非正規の情報源は、徳川幕府開闢以来のものであったようです。敵対する勢力間では必然的に「秘密政治」が実践され、それを暴露しようとする装置が発達するのも、古今東西共通です。こと軍事については、どの国でも「機密」には十分配慮していることでしょう。
しかし、根源的には軍とは、あるいは軍的要素とは、孔子の言を俟たなくまでもなく「不肖の器」なのです。また政治においても「秘密主義」は、様々な憶測を呼びやすく、それが様々なあるいは意外な方向に弊害をもたらすものでしょう。
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