午後1時から3時20分まで、NHKのBS2で、1952年完成・公開の日本映画『箱根風雲録』(山本薩夫監督)を鑑賞しました。江戸時代初期の灌漑土木工事の苦心談が主題でした。
私宮岡治郎は、西武小学校の中学年の1960年代中頃に、『箱根用水物語』を授業で学習しています。その時点では、慢性的な水不足に悩む、現在の静岡県東部の深良村の名主(庄屋)、大庭源之丞(おおばげんのじょう)が主人公で、江戸の商人(当時は武士と誤解)友野与衛門(とものよえもん)を、副主人公と把握していました。
最近になって、土木工事の企画立案から資金調達、隧道工事設計・施工の担い手は、専ら友野に属することが、私にやっと理解出来始めたところです。が、58年も前の映画でさえも、友野が主人公で、元々これが定説のようです。
現在の神奈川県箱根町の芦ノ湖。その北西側の湖尻峠(うみしりとうげ)の地下を両側からトンネルで堀り抜けて、現在の静岡県裾野市まで達する1,280mの用水工事は、江戸時代前期の1666年から70年に実施されています。芦ノ湖の水利権問題、沼津代官所を通じての幕府の権威主義、そして、農業生産の増産の利益配分問題などなどが複雑に絡みます。
映画の登場人物としては、「下馬将軍」とまで呼ばれた有力大老酒井忠清も、会津藩藩祖で将軍補佐役の「名君」保科正之も、凡庸な人物として描かれています。
映画の題名に「風雲」が付くのは、荒唐無稽ながら、島原の乱の残党が、山賊団(首領役は中村翫右衛門)となって、幕府転覆を図る、といった筋書きが並行するからです。原作は、タカクラ・テルの『ハコネ用水』で、前進座が単位(ユニット)として集団出演し、外に山田五十鈴、轟夕起子等が加わっていました。
農民の描き方は、1952年当時の労働争議時代を反映し「団結の意義」が色濃く投影され、かなりの「啓蒙映画」の要素も伺われます。特に、皆から「元締め」と呼ばれた、一大プロジェクトの主宰者の友野(河原崎長十郎)に対する、農民達の離散を経ての再結集の様子が、友野の妻リツ(山田五十鈴)を含めた夫婦の献身によって、クライマックスに達する設定となっています。
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