夜、芥川龍之介の短編小説『鼻』を読みました。 この作家の小説は大抵短編なので時間的に助かります。
勿論、国語の教科書に掲載されていた中学生の頃から、何度も読み返してきた作品です。
今回は、禅智内供の置かれた僧侶としての環境を正確に理解する為に、電子手帳で、続々登場する仏教用語を確認しながら、読み進みました。外典の 「蜀漢の劉玄徳の耳が長かった」といった、歴史的な故事も、例え話として趣を感じました。
この小説は、起承転結の4つの要素から概ね成立している、と気付きました。 すなわち、①導入部、②鼻の『治療』、③周囲の「つけつけ」とした哂い、④元の通りの長い鼻、でしょう。
「鼻」を気にするのはともかく、高僧も身分のまで修行した僧侶ではあるので、宗教的な悟りを最終場面に加えなかったのが、惜しい気もしました。 きっと、シラノ・ド・ベルジュラックとは違った展開もあり得たでしょう。