明治期の啓蒙思想家で、「明六社」のメンバーでもある西村茂樹は、儒教を基盤に西洋哲学の長所を加えた、穏健な社会教化を目指しました。 西村は、著書『日本道徳論』の中で、道徳を「世教」と「世外教」とに区分して論じていました。 宗教抜きの道徳が「世教」、宗教に基づく道徳が「世外教」という事になります。
自己の展開する道徳論を、世俗の人倫に基づく道徳と、超自然的な現象、現世とは別の世界の存在、を前提とする宗教による道徳とに、区分しています。
東洋の倫理も、西洋の哲学も、そもそも、宗教的な要素が有ったら、融合は不可能では無いかと私は考えます。 その存在が科学的に証明出来ない、それでいて全知全能、絶対の神の存在を前提とする宗教的道徳論は、どうしても「唯我独尊」となり、複数の道徳や哲学を並列的に、存在意義を認めることは不可能でしょう。
私は、汎神論者です。それぞれの宗教を、真理の近似値に存在するものとして位置づけて来ました。 しかし、社会教化を目論む教義としては、整合性は必要条件でしょう。
神の存在の前提なし、言わば純粋に、「世内」の世俗的な人倫に基づく道徳律らば、複数の並列的な存在の余地、存在意義を認める余地もあるでしょう。
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