夜、インターネットのオンデマンド配信で、1951年制作の日本映画『カルメン故郷に帰る』を鑑賞しました。
私は、40年ほど前に映画館で観ています。 総天然色の画面の鮮かさの為か、木下惠介の脚本の分かり易さの為か、内容をかなり正確に記憶していました。 今の視点から振り返れば、敗戦から間もない日本の世相を、無意識的に表出した作品となっていました。
東京の風俗産業に従事するヒロイン達を、北軽井沢の浅間山麓の景色や、田舎の人々の純朴さと生活意識の格差の対比の中で、傍観者である鑑賞者に、珍妙で滑稽で哀愁を帯びた存在として描いています。
基調となる通奏低音は、戦争で失明した音楽教師の弾くオルガン曲「火の山の麓の村よ 懐かしの故郷・・・」で、賛美歌風の荘厳さと和風の素朴さとがあります。 小学校児童の校庭でのお遊戯的な踊りをミュージカル仕立てにしつつ、何らかの人間救済を象徴してるように思われます。
ストリパーのショウを、仮初にも「芸術」と銘打てる時代が、今となっては懐かしい次第です。
しかし、敗戦後に勃興したであろう公営ギャンブルの競輪を引き合いに出して、「それよりもまし」といったセリフもありました。 これも文明批判ひいては、社会批判、更には政治批判かとも思い、納得出来ました。
ヒロイン達の芸術家気取り、それに営利目的で絡みつく者達の浅ましさ、学校長の理想主義、ヒロインの父親の普遍的な父性愛などが、刹那的欲望と永遠の人類愛の相克も的確に提示されていました。 現代社会との対比性と共通性とが絡んで、私は鑑賞後に感慨にふけりました。