寺田寅彦の1932年随筆に、当時「至る処の街頭で千人針に寄進が行われている。」として、その社会現象について、論じた内容があります。 その題名もズバリ『仙人針』です。
科学者の立場もあり、間接的に「迷信だと云ってけなす人もあるが。たとえ迷信だとしてもこれらはよほどたちのいい迷信である。」として、害の少ないものとして、たわいの無い物とやんわりと論じています。
しかし、科学者と文明批判家としての寺田寅彦の本領は、その数行後に続く「迷信でたちの悪いのは国を滅ぼし民ずくを危うくするものもあい、・・・」です。
明言を避けていますが、軍国主義の台頭そのものを、危惧しながら批判しているのでしょう。
「国家国民の将来を危うくするような迷信が眼前の日本に流行してはいなか。よくよく心を落ち着けて反省してみなければならない。」と結んでいます。
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