以前から気に掛けて来た文学作品の『刺青』を、初めて読みました。
谷崎潤一郎氏については、文化論の『陰翳礼賛』は幾度か、私なりに精読して来ました。
後は、映画化された『細雪』(1983年)や、原作の一分通読に止まっていました。
谷崎氏の作品の肝である、耽美的部分には、なぜか遠ざかって来ました。『刺青』は、その耽美主義の代表作でしょう。
生身の進退を毀損する、彫り物の行為について、どうしてもマイナスなイメージが付きまとっていたからでしょう。
内容はおとぎ話的です。比喩としては不適切でしょうが、尾崎士郎の『人生劇場』に登場する、侠客の世界並みの、おとぎ話です。
執筆された1910年当時からも『昔むかし』の、虚構の設定です。
一気に、一思いに読んで、美の極致をなぞらえたならば、こういった構造になるのかな、といった所です。
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