昨晩、DVDで、映画『歩いても歩いても』を鑑賞しました。2008年公開の日本映画で、監督是枝裕和、主演安部寛です。
不慮の死によって、両親よりも先立った長男の命日に集まった、家族の人間模様を、次男(上安部寛)の視点を中心に描いています。現実の世界がそうであるように、登場人物の会話の発音は不明瞭であり、対話が途中で、第三者の介入で遮断されたり、間を置いて再開したりなど、すれ違いに満ちています。
15年前の長男の不条理な死といった大きな不幸の余韻は、消し去ることは不可能です。むしろ、この不条理消し去るのではなく「反芻」する装置として、25歳の青年が登場します。長男が15年前に海岸で溺れる少年を救助して自身は死亡した原因を作った、当の少年の15年後の姿です。
詫びと供養を兼ね、「生きていて御免なさい」といって帰るの事によって、心の平衡感覚を保持しようとする老母(樹木希林)の本心が、怖ろしくもありあり、悲しくもあります。
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