老朽化した原発の稼動期間の延長を昨年の秋に宣言し、原発推進の足掛りを開始した、ドイツの首相メルケルが、「フクシマ原発事故」による、ドイツ国民の世論の変化をすんなり受け入れて、期限付きの「段階的原発廃止」の方向性を示しました。
国会の場でも、自由民主党との連立があるものの、機軸となる保守系のキリスト教民主同盟党首でありながら、原発推進の誤りをはっきりと認め、姑息な手段を弄せずに、根本的な方針転換を積極的に打ち出しました。様々な利害関係とは一線を画し、理論付けも哲学的です。
2500年ほど前の中国の思想家孔子の言行録『論語』の言葉として、日本にも普及した言葉、「過てば改めるに憚ること勿れ」を想起させます。
「フクシマは原子力に対する私の見解を変えた。」と断言し、それに至るまでの論証は、「信頼性」を中心として展開しています。
私はなぜか、リンカーン大統領のゲティスバーグの演説を想起しました。極東の島国で、大津波といった外的な要素に起因する事態であってすら、「自己反省と方針転換」を憚ることなく貫く中に、荘厳ささえも読み取れるのです。メルケル首相は後世、ドイツの「国母」と称えられるでしょう。
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